わかって納得の知財ブログ

105:【企業向け】カラオケ店でのミシンのレンタルサービスの繁盛にみる商標登録の見直しの重要性

先日、〔「カラオケでミシン貸出」なぜ実現? 大反響で期間延長、異色サービスの背景に「意外な歴史」〕と題する報道に触れました。わずか1000円でミシン1台をレンタルすることができるということで、好評を博しているそうです。その報道によれば、カラオケでのミシンのレンタルは、「歌うにとどまらない、カラオケルームの新たな活用法」として提供されるものだそうで、コロナ禍におけるビジネスの変化の一つと言えるでしょう。

ところで、商標というのは商品やサービスの目印として採択する文字や図形などの標識をいい(商標法2条1項参照)、ここにいうサービス(役務)とは「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきものをいう」とされます(工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第21版〕1488ページ参照)。

つまり、有償で提供されるサービスは、商標法上のサービス(役務)ということになります。そして、何らかの目印の下でそのサービスが提供される限り、そのサービスをちゃんと指定して商標登録を受けておく必要があります。なぜなら、サービスが異なれば他人の商標権が存在する可能性があり、ともすれば他人の商標権を侵害してしまう恐れがあるからです。また、売りつけ目的などで商標登録を先取りされるなど、他社から直接・間接に妨害・嫌がらせを受ける可能性も否定できませんので、この観点からも、自社のサービスを網羅的に指定する商標登録が欠かせません。

もちろん、そのような妨害・嫌がらせは、それが確実に妨害・嫌がらせであることが立証できるとすれば、訴訟などに発展したとしても最終的には対処のしようもあるかもしれません。しかし、これを後から立証するということは必ずしも容易ではありませんし、こうした場合のトラブル解決に必要な解決コスト・労力というのは、非常に大きなものとなりがちです。また、上記のように、全く悪気なく他人の商標権を侵害してしまうという場合もあり、この場合の解決コスト・労力もバカになりません。

こうしたことから、弊所では、予め必要十分な範囲で商標登録を受けておくことを推奨しており、かつ、定期的な商標登録の見直し・棚卸しをお勧めしているところです。商標登録は一度登録を受ければその後、どうなっても大丈夫というものではなく、定期的な更新はもちろん、使い方や使う範囲が変わった場合には、商標登録の追加・取り直しが必要になります。

ちなみに、商標登録は、その商標をいったいどういった商品・サービスの目印として使用するかを明らかにして特許庁に出願する必要があります。冒頭の例で言えば、カラオケ店は、国際分類における第41類に該当します。またカラオケ店では、飲食サービスが提供されていることも多く、第43類も欠かせません。つまり、最低限の範囲として、第41類と第43類を指定する商標登録が欠かせません。

しかし、今回の追加サービスのようなミシンのレンタルというのは、国際分類における第40類に属するもので、上記のいずれにも属しません。よって、商標に関するトラブル回避・リスク低減を考えますと、追加で商標登録出願を行うべきだ、ということになります。

こうした事業の拡大や変更というのは、冒頭の例に限らず、ビジネスの現場ではしばしば起きることではないかと思いますが、安心してビジネスを進めていくには、先手先手で対応をしておく(商標出願をしておく)ことが一番の紛争予防になるということを改めて覚えておいて頂けたらと思います。

なお、弊所では、企業との顧問契約も承っております。企業の成長や事業の拡大に伴う知財対応についてお力添えをさせて頂きますので、ご興味がありましたらお問い合わせ頂ければ幸いです。


<<お問い合わせはこちらから>>

この記事の内容について詳しくお知りになりたい方は、
以下のボタンからお気軽に当事務所までご連絡ください。


PAGE TOP