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001:【初心者向け】商標は早い者勝ちの本当の意味|中小企業に有利なのは先願主義か先使用主義かを徹底解説

「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。

「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。

さて、今日のお題は「商標は早い者勝ちの本当の意味」です。

読んで字の如し、と言ってしまえば身も蓋もないのですが、このブログはとにかく噛み砕いてお伝えする、をコンセプトとしていますので、書き進めたいと思います。

目次


  • 使用・出願・登録のどれが早いことを指しているのか。
  • 世界でメジャーな先願主義とマイナーな先使用主義
  • 何が公平かと考えたら先願主義に軍配が
  • 合理的な先願主義とその若干の修正

使用・出願・登録のどれが早いことを指しているのか。


まず、早い者勝ちというのは、どういうことかからお伝えしたいと思います。つまり、何が早いのか、ということです。

商標についての権利「商標権」は、特許庁に出願をして、審査を通過して、登録料を納付することでようやく、登録になります。そして、登録を受けることで初めて、商標権が発生します。

ここで気になるのが、「先に使っていた人が優先」するのか、それとも「先に特許庁に出願した人が優先」するのか、あるいは「先に審査を通過して登録料を納付した人が優先」するのか、ということかと思います。

今私は、3つの選択肢を記載しましたが、3つ目の「先に審査を通過して登録料を納付した人が優先」というのは、ちょっと考えにくいですね。

順番からして、先に出願という行為があるわけで、一般的なイメージとしてもそうだと思いますが、書類が出された順に処理されていくというのが通常の流れです。

もし審査通過が早い方が優先するのであれば、毎日のように特許庁に電話をかけたりお手紙を書いたり、あるいは贈り物を送るという人が出てきかねません。

行政の中立性・公平性という観点からも、客観的な基準に基づいて、審査をしてもらう必要があります。

こうした意味で、3つ目の「先に審査を通過して登録料を納付した人が優先」というのは、現実的には難しいというか、正解ではありません。

世界でメジャーな先願主義とマイナーな先使用主義


ということで、ここからが本題となるわけですが、「先に使っていた人が優先」なのか、それとも「先に特許庁に出願した人が優先」なのか。

これは、実は何が理論的に正解というものはなく、どちらがより良いか、という政策的な判断によります。

結論を先にお伝えすると、日本をはじめ、世界中のほとんどの国は、「先に特許庁に出願した人が優先」という制度にしています。

これを、先に出願した人が優先する主義ということで、「先願主義」と呼びます(もう一方を「先使用主義」と呼びます。)。

では、なぜ日本をはじめ、ほとんどの国で先に使用していた人ではなく、いち早く特許庁に出願をした人が優先するという制度をとっているのでしょうか。

一見すると、昔から使っていたのにたまたま出願していなかっただけの人より、後から書類を整えて手続きした人の方が優先するというのは、不公平という意見も聞こえてきそうです。

これはこれで一理あって、もちろんこうした点を踏まえた修正もかけられているのですが、後ほど解説します。

何が公平かと考えたら先願主義に軍配が


なぜ先に出願した人を優先させるかという理由には、まず、書類を提出した日を基準にすれば、誰からみても優劣関係が明確である、というのがあります。

つまり、出願のためにはひと通り必要書類を整えて、特許庁に提出するわけですが、その提出日というのは、改ざんが難しいといえます。

一方、初めて商標を使いはじめた日というのは、果たして確実に記録が取れているものでしょうか。

嘘を言うかどうかと言うことはさておくとしても、ある商品の目印を何月何日に使いはじめたと言うことを、証拠と一緒に保管していると言う人は、どれほどいるでしょうか。

記憶違いも出てくるかもしれませんし、資料が無くなってしまうと言うこともあるでしょう。

こうした意味で、出願した日を基準とすると、客観的で確実な判断ができるようになります。

しかしそれでは、特許庁への出願のための費用を捻出できる大企業・資本家が有利ではないか、中小企業や個人事業主が冷遇されているのではないか、と言う批判も聞こえてきそうです。

ですが改めて考えてみますと、もし先に使っていた人が優先する、と言うことになると、商標権を取ろうと思った人は、全国津々浦々、歴史から紐解いて調べ上げる必要があり、それこそ費用がとてつもないことになりかねません。

一方、出願した日を基準とすれば、つまりそれは、特許庁に記録されている情報を調べさえすれば、あらかたの見通しは立てられると言うことになります。

すなわち、資本規模が大企業ほどではなくても、現実的に対応できる費用感に収まると言うことです。

合理的な先願主義とその若干の修正


このように考えると、「先に特許庁に出願した人が優先」すると言う「先願主義」には、合理的な面が見えてくるかと思います。

前述の、先に使っていた人が不利にならないような「修正」があるとお伝えしましたが、これに関しては、他人がした出願の日より前に、自分の商標が有名になっていれば、その範囲で使い続けていいよ、と言う救済措置が設けられています。

ただ、これが認められるためにはハードルが高く、結局、さっさと出願しておくことが、一番の防衛になったりします。この「修正」については、回を改めて記事にしたいと思います。


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