わかって納得の知財ブログ

007:【一般向け】いわゆる「トレパク」の著作権法上の問題について

「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。

さて、今日のお題は「いわゆる「トレパク」の著作権法上の問題について」です。

「トレパク」とは、「トレース」と「パクリ」を結合した現代用語(ネット用語)のようですが、その意味するところは、読んで字の如く「トレース(複写)してパクる(盗む)」ということを意味しているものと理解されます。

既存のイラストなどをトレースをしただけでは、単なるトレースであり、パクリというネガティブな意味合いが加味されるのは、そのトレースやその後の利用の仕方などに、何らかの悪質性があるからで、この点を捉えて単なるトレースと区別して用いられているものと思われます。

目次


  • 単なる「トレース」と悪質な「トレパク」は著作権法的には同じもの?
  • 「トレパク」でない「トレース」であれば適法か?
  • マナー違反と法律違反は別物だと知っておこう

単なる「トレース」と悪質な「トレパク」は著作権法的には同じもの?


上で触れたように、単なる「トレース」と「トレパク」は、行為が悪質かどうかという点がその違いのようですが、どちらも既存の写真やイラストなどを複写していることには変わりがありません。

著作権法では、イラストや写真などの著作物について、鑑賞したり読んだりするなど、基本的には自由に利用をしてもいいけれど、一部の行為については著作権者の許諾が必要だ(許諾なくいくつかの行為を行うと著作権侵害になる)という制度になっています。

そして、許諾が必要な行為の筆頭に「複製」が規定されています。このほか、「譲渡」や「公衆送信(放送やインターネットを通じた配信など)」も許諾が必要な行為として規定されています。

ここで「複製」とは、実務では、「既存の著作物に依拠して、その内容や形式を覚知させるに足りるものを再製するもの」とされています。

噛み砕くと、「既に存在する作品に乗っかって、元とした作品がわかるように再び作り上げること」とでも言い換えられますでしょうか。

語弊を恐れずに端的に言ってしまえば、「コピー」です。いわゆるコピー機で行うコピーはもちろんのこと、写真撮影によってもコピーはできます。また、電子ファイルのコピーを作ることも、著作権法上の「複製」に該当します。

したがって、既存のイラストや写真をコピーすることは、それが「トレース」であるか「トレパク」であるかに関わりなく「複製」であり、この意味では同質なものです。

そして、これを著作権者に無断でやると、形式的には著作権(複製権)を侵害することになります。

なお、著作権法上の「複製」は、著作物の種類によっても内容が細かく規定されおり、一般用語としての「コピー」のイメージとは若干ずれがあることを知っておいて頂ければと思います。

「トレパク」でない「トレース」であれば適法か?


著作物を無断で複製することは形式的には著作権侵害だ、と上で書きました。

「形式的に」とはなんだと思われた方もいるかもしれませんが、例えば、もっぱら自分の絵の技術を高めるための訓練として、既存の絵画を模写するような場合を考えてみましょう。

その絵画の複製は、形式的には著作権を侵害するものと言えますが、私的使用のための複製であると考えられ、絵画の著作権の侵害とはなりません。

また、街中に絵画が飾られている場合に、その絵画をごく一部に取り込みながらその街の風景を絵画化する場合、街中に飾られた絵画の複製は、写り込みによる複製であると考えられ、これも絵画の著作権の侵害とはなりません。

一方、先の例の1つ目でいうと、当初は私的使用のためにした複製であっても、あまりに出来が良いからといって誰かに販売したり、インターネット上に公開して他人が閲覧できるようにすると問題です。

たとえ元々は私的使用のための複製であっても、目的外使用ということになり、絵画の著作権の侵害となります。

また、先の例の2つ目で、いかに写り込みだ言い張っても、街中に飾られた絵画が風景のほとんどを占めているような場合、それはもはや写り込みではなくなってしまい、こちらも絵画の著作権の侵害となります。

マナー違反と法律違反は別物だと知っておこう


上で書いたように、単なる「トレース」であっても、著作権を侵害する(著作権法に違反する)場合があることをご理解頂けたかと思います。

イラストを描く技術を高めるための手法の一つとして「トレース」を行うことは、これを通じて筆遣いなどが学べるなど、有用なものかと思われますし、これ自体はマナー違反でもないことでしょう。

しかし、その過程で生み出されたイラストを販売したり、インターネットで公開するなどする行為は、マナー違反なのでしょうか。

マナー違反かどうかの線引きは人により意見が異なるかとも思われますが、いずれにしても無断で行えば著作権法に違反するものとなる点は押さえておきたいところです。

いわゆる「トレパク」として非難されるような、トレースしたイラストをあたかも自分の作品であるかのように騙ったり、トレース作品であることを隠したりして、販売したりインターネット上に公開するようなことは、マナーの観点からも宜しくはないでしょう。さらにそれが、著作権法に違反する行為であれば、やはり非難は免れないでしょう。

著作権法には、10余りの財産的な権利や3つの人格的な権利が定められていて、今から行おうとしている行為が一体どの権利との関係で問題になるかというのは、専門的な判断が求められます。ご不安な方は、当事務所に相談頂ければと思います。


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