「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。
さて、今日のお題は「令和3年上半期の模倣品の差し止め状況について」です。
輸入品などの検査を行っている税関では、日夜、日本国内に入ってこようとする貨物や郵便物を調べ、模倣品・ニセモノの摘発を行っています。
今年2021年の上半期の摘発状況について、9月10日付で財務省から発表がありましたので、簡単にご紹介したいと思います。
なお、財務省の報道発表資料は以下のリンクから取得できますので、ご興味がある方はどうぞ。
財務省|令和3年上半期の税関における知的財産侵害物品の差止状況
目次
- 2年連続で半年間の輸入差止め件数が1.4万件超。46万点の模倣品の流入を阻止
- 仕出し国(輸出国)は中国が今年も第一位。多いのは商標権侵害
- 模倣品は買わない、売らない、買わせない
2年連続で半年間の輸入差止め件数が1.4万件超。46万点の模倣品の流入を阻止
財務省の発表によれば、2021年上半期(1月〜6月)の間に、知的財産権の侵害を理由として輸入差止めがされた件数は、14,600件であったとのことです。昨年同時期と比較して5%の減少があったものの、依然として高水準を維持しています。
この「件数」というのは、輸入申告や郵便物の件数であり、差し止められた物品の「点数」ではありません。
それでは輸入差止めの点数は一体どうなのだということですが、2021年上半期(1月〜6月)の間に輸入差止めがされた点数は、460,764点であったとのことです。昨年同時期と比較して、67.2%の増加があったとのことです。
輸入差止めの件数はほぼ横ばいである一方、輸入差し止めの点数は大幅に増加しています。
これは、昨年同時期と比較して、一件の輸入貨物の中に多数の模倣品が入っていたという状況があることが見受けられます。
仕出し国(輸出国)は中国が今年も第一位。多いのは商標権侵害
世界各国から日本に向けて模倣品・ニセモノが輸出されてきます。
輸出国としては、輸入差止めの件数ベースで、数が多い順に中国、ベトナム、フィリピン、韓国、香港となりりますが、件数が飛び抜けて多いのが中国です。輸入差止めの件数ベースで、8割以上を占めています。
また、侵害している知的財産権の種類としては、商標権が最も多いです。件数ベースで96%以上、点数ベースでは74%以上が商標権侵害を理由として、輸入が差し止められています。
このほか、著作権侵害を理由としても多くの物品が差し止められています。
著作権侵害の場合で多いのは偽キャラクター物や音楽などの海賊版です。
最近流行りの「鬼滅の刃」関連のものや、高級ブランドもの、マスクなど、ニセモノはあらゆるジャンルにわたっています。
模倣品は買わない、売らない、買わせない
模倣品・ニセモノは、日本にいる誰かが輸入をしようとしているから日本に入ってきています。
インターネット通販が気軽にできるようになった現代こそ、ある意味で簡単に模倣品が手に入るようになっています。
しかし、模倣品は、正規品とはデザインが違ったり、価格が安すぎたり、銀行振り込みしか受け付けていなかったりなど、どこかに怪しいところがあったりするものです。
差し止められている物品の品目を見てみますと、洋服やかばん、靴、時計などの日用品・生活用品が多く見られていますので、できるだけお得に買おうという意識が働きやすいジャンルかもしれません。
しかし、模倣品・ニセモノを購入すると、お金は支払っているのに税関で差し止められて手元に届かないなんていうことにもなりかねません。
また、手元に届いたとしても品質に問題があるものであることも多々あり、健康上の被害を被る可能性もあります。
かといって、何かあった場合に、ニセモノ業者にクレームをつけたとしても、適切な対応をしてもらえることは期待できないでしょう。
自分、家族を守るには、結局ひとりひとりがニセモノを掴まないよう、注意して買い物をしていく必要があります。まして、ニセモノを安く仕入れて高く売ろうなどというのはもってのほかです。
特許庁では、昨年度から「コピー商品撲滅キャンペーン」を展開しており、ニセモノをつかまされないためのポイントがわかりやすくまとめられていますので、ご心配な方は一度ご覧いただくと良いかもしれません。
もし税関から通知書が送られてきたという場合には、お気軽に当事務所までご相談いただければと思います。
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