わかって納得の知財ブログ

012:【一般向け】自分で観るために映画を盗撮すると著作権侵害になる?

「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。

さて、今日のお題は「自分で観るために映画を盗撮すると著作権侵害になる?」です。

テレビで放送されている映画を録画したことがある方も多いのではないかと思います。

しかし、映画館に行くと、放映前に盗撮禁止との映像が流れますね。

最近のニュースで、税務署職員が書類送検されて罰金を課されていたという報道もありました。

テレビの録画と映画館での録画とで何が違うのか、噛み砕いてお伝えしたいと思います。

目次


  • 映画作品の録画は著作権法上「複製」になる
  • 私的使用のための「複製」であれば、著作権法上は合法
  • 映画の盗撮はなぜ禁止されているのか

映画作品の録画は著作権法上「複製」になる


複製という言葉が出てきました。言葉としては、日常生活でも使うことがあるものですが、これは法律用語で、著作権法には定義が書かれています。

「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」

著作権方第2条第1項第15号

前半部分はイメージが湧くかと思いますが、後半の「有形的に再製」、これはあまり見慣れない表現ですね。

これは、紙やフィルム、光ディスクなどの媒体に固定をすることを言います。

このため、ビデオカメラはもちろん、スマートフォンやフィルムカメラで上映されている映画を録画すること、さらにはテレビで放送される映画をビデオテープやDVD・Blu-rayディスク、あるいはハードディスクに録画することも、録画の方法によって媒体に固定しているため、複製にあたります。

2時間映画の一部分を録画するものであっても、複製にあたります。

私的使用のための「複製」であれば、著作権法上は合法


著作権法上、著作物の複製に該当するものであっても、その複製が私的使用の目的であれば、著作権を侵害しないものとして取り扱われます。

そして、ここにいう「私的使用」というのは、個人的な使用や、家庭内での使用、これに準ずると言える範囲内での使用に限られています。

このため、テレビで放送される映画をリアルタイムで視聴することができないからとか、後でもう一度観たいからとかいう理由・目的で録画をすることは、私的使用のための複製であると言え、著作権を侵害するものとはなりません。つまり、合法です。

映画の盗撮はなぜ禁止されているのか


一方、映画館で放映されている映画についてはどうでしょうか。

映画館で観たものをもう一度自宅で観たいというような場合には、それは私的使用のためではないのでしょうか。

法律の条文上、私的使用のための複製として問題ないようにも思われますが、実は「映画の盗撮の防止に関する法律」という、著作権法とは別の法律があります。

結論としては、新作映画の盗撮は違法です。

平成19(2007)年に議員立法で成立した「映画の盗撮の防止に関する法律」は、映画の盗撮によって映画産業に多大な損害が発生していた状況に対処するために作られたもので、私的使用のための複製であっても、映画の盗撮が著作権を侵害するものとして取り扱われることになりました。

映画館などで有料で上映されている映画のみならず、無料試写会で上映されている映画も対象で、撮影をしたり録音をしたりすると盗撮になりますので注意が必要です。

いくら私的使用のためだとは言っても、違法行為は慎んで、映画を楽しみたいものです。

なお、この「映画の盗撮の防止に関する法律」の対象となるのは、日本国内で初めて有料上映されてから8ヶ月以内の新作映画のみとなります。

この期間が経過した映画については、著作権法のルールに戻って合法・違法の判断がなされます。

詳しくは、以下のリンクが詳しいので、ご興味のある方はこちらからどうぞ。

文化庁|映画の盗撮の防止に関する法律について


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