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017:【一般向け】中国当局が五輪関連ホットワードの商標出願代理に厳しい姿勢で臨むことを公表

「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。

さて、今日のお題は「中国当局が五輪関連ホットワードの商標出願代行に厳しい姿勢で臨むことを公表」です。

一年の延期を経て開催された東京オリンピック・パラリンピックは、多くの感動を与えてくれましたが、その背景では、オリンピック選手の氏名を勝手に商標登録を試みていたという報道もありました。その多くは拒絶されているようですが。。

本記事は、その続きと、トラブルに巻き込まれることをどうやって回避するかというお話です。

目次


  • 中国当局の公表した通達は五輪関係ワード出願の“代理”の厳しい取締り
  • トラブルに巻き込まれないためには早期の出願が一番のワケ

中国当局の公表した通達は五輪関係ワード出願の“代理”の厳しい取締り


このほど、中国の商標業務を所管する官庁である国家知識産権局の弁公室が通達を出したとの情報がありました。

各地方の知識産権局に対し、オリンピック関連のホットワードを使った商標登録出願の代理を厳しく取り締まるよう求めたとのことです。

こうした勝手出願は、中国の商標制度上、形式的には問題なく通ってしまう性質のものではありますが、心情としては許し難いものと言えます。

今回、中国当局は、こうした悪意的な先駆け出願は、他人の氏名権などの権利利益を侵害するもので、社会に悪影響を与えるものであるとして、監視・管理・指導の強化のみならず、懲罰を徹底するよう求めることで、こうした先駆け出願の代理に対して厳しい姿勢を表明しています。

ここでポイントなのは、出願の“代理”を厳しく取り締まるよう求めたというところです。

現在の中国では、国家資格を保有しない者でも商標登録出願の代理ができる制度になっているため、誰かの求めに応じて商標登録出願を代理する業者はさまざまにいると言われています。

このため、こうした社会に悪影響を与える出願の代理をしてはならないとして、あえて明確に表明したものと考えられます。

中国政府網報道発表資料(中国語)

トラブルに巻き込まれないためには早期の出願が一番のワケ


こうした勝手出願は、オリンピックの開催に始まったことではなく、これまでにも少なくない数の日本ブランドも標的とされてきました。

もちろん、勝手にされた出願(業界では「冒認出願(ぼうにんしゅつがん)」と呼んでいます。)に対して指を咥えるしかできないかといえばそうではありません。

登録になる前であれば、商標登録をすべきではないとして異議申立てをすることができますし、商標登録後であれば、商標登録は無効にすべきだとして無効審判を請求することもできます。

しかし、いずれにしても、他人が先にした出願を後からひっくり返そうとするものですので、非常に労力のかかるものとなります。

具体的には、早い者勝ちという原則を覆すほどの理由があるかということを納得してもらうために、自分のブランドが中国でどれだけ知られているか、影響力を持っているかといったことを、大量の証拠資料とともに提出して争っていく必要があります。

中国国内で商標登録を持つことなく大々的に事業展開をしているというケースはそう多くはないでしょうから、実際上、異議申立てや無効審判を行うとしても、成功するかは楽観的に考えられるものではありませんし、費用も馬鹿になりません。

確かに、他人に勝手に出願をされてしまった場合に手立てはあるにはあるものの、さっさと出願するということに比べればコストパフォーマンスとしては悪いと言わざるを得ませんし、成功可能性は未知数です。

出願であれば、6ヶ月程度で審査結果が出るのに対して、異議申立てや無効審判では、早くても一年前後の時間がかかっているのが現状です。

そうすると、心情は別として、トラブルに巻き込まれる前に、いの一番に中国に出願をしておくというのが、一番賢明だったりします。


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