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018:【事業者向け】北京知的財産裁判所が商標登録の不使用取消訴訟における偽の証拠提出を厳罰することを発表

「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。

さて、今日のお題は「北京知的財産裁判所が商標登録の不使用取消訴訟における偽の証拠提出を厳罰することを発表」です。

中国の商標登録は、継続して3年以上、指定する商品やサービスとの関係で使用していない場合、第三者から請求があれば、取り消すこととされています。

最初の段階では、中国の所轄当局である商標局に不使用取消審判を提起することになり、その結果に不服がある場合には、商標評審委員会に不服申立てを行います。

もし、そこでの判断に不服がある場合には、裁判所に出訴することになります。今回の記事は、その不服訴訟の管轄裁判所である北京知的財産裁判所の公表した2021年9月15日付の記事に関するものです。

目次


  • 使用証拠の偽造・捏造には重罰が待っている
  • 審査の厳格化は喜ばしいが、不使用取消審判をかけられた時はどうか

使用証拠の偽造・捏造には重罰が待っている


登録商標が適正に使用されていない場合には、第三者が請求することで、商標登録を取り消してもらうことができます。その手続きを不使用取消審判(ふしよう とりけし しんぱん)と言います。

不使用取消審判を請求されますと、商標権者に、登録商標を使っているならその証拠を出しなさい、さもないと商標登録を取り消します、という通知が行きます。

その際、商標権者としては、商品の写真や請求書、契約書、検査報告書といった、各種の証拠書類を提出することになります。

しかし、今回の発表によれば、やはりと言いますか、中には偽造した証拠を提出する者がいたようです。

北京知的財産裁判所(北京知識産権法院)では、2019年のこれまでに4万114件の商標権の権利確定案件を審理をし、このうち商標登録の取消審判に対する不服請求事件が9.6%を占めていたということですから、件数としては約3,850件ということになります。

このうち、一部の商標権者が、自己の商標登録を維持するため(取り消されないよう)、虚偽又は偽造の証拠を提出していたことが明らかになった、ということのようです。

これを受け、北京知的財産裁判所としては今後、登録商標の使用証拠の原本の提出を要求するなど、使用証拠についてより厳しく審査し、使用証拠の偽造行為があった場合には、最も重い罰を課すという方針としました。

中国商務部ウェブサイト(中国語)

審査の厳格化は喜ばしいが、不使用取消審判をかけられた時はどうか


証拠の偽造がまかり通ってはなりませんから、証拠の偽造に対して厳しく対処をするということは歓迎すべきでしょう。

しかし一方で、このルールは何も中国企業だけに適用されるものではありませんので、日本の商標権者が不使用取消審判を提起された場合にも、適用される可能性があるものとなります。

つまり、もし日本企業が保有する商標登録に対して不使用取消審判をかけられた場合には、証拠の原本を提出することを求められる可能性があるということになります。

この発表では、真偽が疑われる一応の証拠について、商標権者に証拠の原本を提出するように命じるものとされます。

そしてこの場合において、商標権者が証拠の原本を提出せず、不正確であることについて合理的な説明をしない場合、裁判所は当該証拠が偽証されたものであると認定するとしています。

使用証拠の典型としては、前記の通り、商品の写真や請求書、契約書、検査報告書、他にも商品のパッケージやタグ、パンフレット、広告宣伝媒体や、展示会などで用いた資料など、ということになります。

しかし、いずれも複製が容易なものや、そもそも原本が手元にないものもあるかと思います。

この厳格化というのが、どの程度、立証負担に影響を与えるかは未知数ですが、この発表では、銀行の振込伝票や請求書を適正に保管することまで言及されていることから、実務に与える影響は少なくないものと予想されます。

中国で商標登録を保有している方や、これから商標登録を受けようという方は、中国における使用証拠をきっちり収集・保存しておく取り組みを、業務に組み込んでおく必要があると言えるでしょう。


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