わかって納得の知財ブログ

019:【一般向け】中国税関が差し押さえた知的財産権を侵害する貨物が累計で28億点に

「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。

さて、今日のお題は「中国税関が差し押さえた知的財産権を侵害する貨物が累計で28億点に」です。

中国は偽物(知的財産権を侵害する物品)が多いというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、中国の税関当局では、偽物の摘発に力を入れていることをご存知でしたでしょうか。

目次


  • 過去30年間の実績で合計28億点の差し止め
  • 無断使用を排除するには中国での権利取得が必須
  • 安心してビジネスを行うには商標登録+αで自分の権利をしっかり確保

過去30年間の実績で合計28億点の差し止め


形ある商品は、あるときは特許技術を用いて、あるときは映画やアニメなどのコンテンツを含み、あるときは優れたデザインが施されて、製造され、その多くは商標が付されて世界各国の市場に流通します。

中国は、国際的な流通が進む中で、世界の工場として名を馳せてきました。

しかし一方で、こうした商品に関して権利者に無断で知的財産を実施・利用した模倣品や偽物、海賊版が出回っているという事実もあり、中国政府としては、模倣品や偽物の撲滅に取り組んできました。

その取り組みの一つとして挙げられるのが、中国の国境に設けられた税関(海関)における輸出・輸入の規制です。

中国政府では、これまでに30年間にわたり、知的財産権を保護する取り組みを行っており、2021年9月14日付の発表によれば、2020年末時点でこれまでに合計41万ロット、28億点ものも侵害貨物を摘発してきたとのことです。

金額にしてみると、61億元(約976億円)に相当するとのことですので、相当な量・金額であると言えます。

中国の税関での摘発を求める場合には、税関保護システムに登録をする必要があります。

現在では10万3,000件もの知的財産に関する登録がされており、このうちには、121の国や地域から2万1,000社の企業による登録もなされているようです。

中国商務部ウェブサイト(中国語)

無断使用を排除するには中国での権利取得が必須


輸入や輸出の際に、商品が一時的にも差し止められてしまうと、まず第一に、取引先に迷惑がかかってしまいます。

また、偽物が自分の商品が展開する市場に流れ込んでくると、顧客が間違って購入したり、酷い場合には顧客に健康被害が発生することもあるため、多くの人に迷惑がかかることもあるでしょう。

もしその評判が出回ってしまうと、出回り方によっては風評被害を受けることも懸念されます。

このため、偽物が出回っているという情報を掴んだときには、速やかに対処をして、偽物を排除する必要があります。

しかし、この段階で、もし自分の権利を確保しておかないと、どういうことになるでしょうか。

日本の権利は中国には及びませんので、日本で権利を取得していても、中国で権利を取得していなければ、中国で権利行使をすることはできません。

権利行使を行うにも権利がない、ということになってしまいます。

また、自分の商標登録を他人に取られてしまうと、逆に、それに基づいて権利行使を受ける可能性が出てきます。

安心してビジネスを行うには商標登録+αで自分の権利をしっかり確保


このため、まず第一に取り組むべきことは、中国での権利の確保です。

商標登録をいち早く受けるということは、最も優先して行うことと言えるでしょう。

中国へは、直接出願する方法のほかにも、マドリッド協定議定書(マドリッド・プロトコル)に基づく国際出願を行うことも可能です。

自分が商標権を持っていれば、他人による無断使用があった場合には、税関に登録をして輸入ないし輸出をストップさせることもできるようになりますので、結果として、自分のマーケットを守るということもできるようになります。

また、著作権については、登録をすることなく権利が発生するのですが、トラブルになったときに意味で、著作権登録を受けることは積極的に行いたいと言えます。

著作権登録は、それがあることで著作物が自己のものであると推定してもらえるようになります(実務では「初歩的証明」と言います。)。

著作権は、登録なしで権利が得られる分、権利の発生や帰属が問題になることが少なくありません。

事件が裁判所に行ったときには、如何に自分に有利な証拠を揃えるかということが大切ですが、自分に有利な証拠が少ない労力で得られるので、非常におすすめの手段と言えます。

中国の著作権登録に関しては、以下のURLも参考にして頂けたらと思います。

中国の著作権登録制度|弁理士の著作権情報室

また、自社の商品が優れたデザインが施されている場合には、意匠登録も検討するとよいでしょう。

中国でのビジネスが見えてきたら、具体的な話に進む前に、信頼できる弁理士に商標や中国での権利化・登録を相談されることを強くお勧めします。


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