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030:【一般向け】シンガポール著作権法の全面改正の骨子〜デジタル時代に向けた著作権のアップデート〜

「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。

さて、今日のお題は「シンガポール著作権法の全面改正の骨子〜デジタル時代に向けた著作権のアップデート〜」です。

シンガポール知的財産庁(IPOS)は、2021年4月1日までを期限として、改正著作権法のパブリックコメントを実施していました。

現在、改正に向けて最終調整が進められているところで、改正著作権法は、2021年11月に発効が予定されています。

目次


  • 改正著作権法の位置付け
  • 改正の骨子の一覧

改正著作権法の位置付け


この改正シンガポール著作権法は、現行の著作権法を平易な英語で完全に書き直したもので、現行の著作権法に取って代わるものであるとされます。

平易な英語で書き直したのは、法律をより分かりやすいものとして、一般の人にとって一層アクセスしやすいような構造にするためであるとのことです。

日本の著作権法は近年毎年のように改正がされていて、一見して分かるほどに複雑な作りになっていますが、改正シンガポール著作権法の、分かりやすさを重視した条文の組み立てというのは、歓迎すべきことだと思います。

今回の改正法は、将来を見据えて、著作物の創作者と利用者の双方にとって利益とあるような環境を提供しようとするものとされます。

つまり、創作者にとっては著作物の創作意欲を高めつつ、著作物の利用者にとっては合理的な利用を認めようとするものとされます。

前記の通り、今回の改正法は、2021年11月の施行とともに発効することが予定されていますが、例外として、権利管理団体(CMO)の規制に関する規定については、継続して議論を進めていくとのことです。

改正の骨子の一覧


改正事項は多岐にわたりますので、本記事では、どのようなことについての改正がされるのか、大枠を掴んでみたいと思います。ポイントは12点あり、3つのカテゴリーに分かれています。

A. 著作権が作品の創作に報い続けるようにすること

  1. 委託されたある種の作品について、創作者に既定の権利の付与(第133〜136条)
  2. 創作者やパフォーマーの作品や演奏が公共の場で使用される場合におけるそれらの特定(第369〜407条)
  3. 無許可のソースから音声画像コンテンツをストリーミングする製品またはサービスで利益を得ることの阻止(第150条)
  4. 録音物が放送または公に演奏された場合の新たな衡平法上の報酬請求権(第121条(b))

B. 著作物が社会全体の利益のために利用可能となるよう確保

  1. 一般的な「フェアユース」の例外の強化(第190〜194条)
  2. 非営利の学校による教育的利用のための新たな例外(第204条)
  3. コンピュータによるデータ分析のための著作物の利用に関する新たな例外(第243~244条)
  4. ギャラリー、図書館、文書館、博物館の業務の円滑化(第221〜236条)
  5. 印刷が困難な利用者のための既存の規定の調整(第206〜216条)
  6. 契約による制限から特定の例外の保護(第186〜187条)
  7. 未発表の著作物の保護に有効期限の設定(第114, 122, 125条)

C. 著作権エコシステムの強化

  1. 集団的管理組織(CMO)のための新しい区分によるライセンスの枠組み(第458〜476条)

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Intellectual Property Office of Singapore (IPOS) | Copyright Resources(英語)


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