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036:【事業者・士業向け】続・既に他人の商標登録があったときの対応方法①反論する(争う)

「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。

さて、今日のお題は「続・既に他人の商標登録があったときの対応方法①反論する(争う)」です。

目次


  • 何に反論するのか
  • そもそもどんな理由で拒絶されるのか
  • 第3条は商標として機能するかどうかをみるところ
  • 第4条は商標として登録をしていいかをみるところ
  • 拒絶理由通知を受け取っても慌てず焦らず

何に反論するのか


前回の記事で、特許庁の審査官から拒絶理由通知を受け取った場合の対応策の一つとして、「反論する(争う)」ということを挙げました。「争う」というと、なんだか訴訟でも起こすのかと誤解を招きそうでしたので、その補足をしたいと思います。

端的に言えば、審査官に考え直してもらうように文章を提出する、ということになります。言い換えると、審査官の暫定的判断に対して反論をする、ということになります。これを、業界では俗に「争う」と呼んでいるんですね。

拒絶理由通知の段階では、審査官の最終的な判断がされたものではなく、あくまでも暫定的な判断ということになりますので、ここで適切な対応を行うことで、拒絶理由を解消することができる場合が少なくありません。

では、拒絶理由通知というのは、一体どういうときに出されるのでしょうか。

そもそもどんな理由で拒絶されるのか


商標登録を求めて出願をすると、審査官は順番に審査をしていきます。

審査官のその日の気分で審査をするというのではなく、どういう判断基準で審査を行うかということは、あらかじめ整理されています。

その大元となるのが商標法第15条ですが、条文は次の通りで、パッと見ただけではよく分からないことになっています。

第十五条 審査官は、商標登録出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その商標登録出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
一 その商標登録出願に係る商標が第三条、第四条第一項、第七条の二第一項、第八条第二項若しくは第五項、第五十一条第二項(第五十二条の二第二項において準用する場合を含む。)、第五十三条第二項又は第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条の規定により商標登録をすることができないものであるとき。
二 その商標登録出願に係る商標が条約の規定により商標登録をすることができないものであるとき。
三 その商標登録出願が第五条第五項又は第六条第一項若しくは第二項に規定する要件を満たしていないとき。

商標法第15条

色々と条文番号が列挙されていますが、実務で遭遇するほとんどは第3条と第4条に関するものです。

第3条は商標として機能するかどうかをみるところ


第3条には、タイトルとして「商標登録の要件」と書かれています。

これだけ見ると、まるでこの条文だけクリアすれば登録できるようにも取れそうですが、登録のためには他の条文の要件も満たす必要があります。

この意味で、もう少しタイトルは検討の余地があったのではないかと個人的には思います。

さて、個人的な意見はさておき、第3条は、商標として機能しないものは登録の要件をそもそも満たしませんよということを述べています。

例えば、商品「林檎」に商標「りんご」では、普通名称なので商標として機能しません。

商品「林檎」に商標「美味しい」では、商品の品質なので、やはり同様に商標として機能しないですね。

第3条には、こうした、ある意味当たり前のことが書いてあると言えます。

もっとも、上記のように明々白々なものばかりであるとは限りませんで、際どい事例もしばしばあります。

際どい事例である場合など、審査官の判断に納得がいかない時には、審査官の判断には誤りがあるのではないかと、再考を促すための意見書を提出して、反論する(争う)ことになります。

第4条は商標として登録をしていいかをみるところ


第4条には、タイトルとして「商標登録を受けることができない商標」と書かれています。

第3条の次にあるという位置付けからもお分かり頂けるかと思いますが、第3条をクリアして、商標として機能するものであっても、第4条で登録を受けられないものがある、ということです。

第4条には、公益的なものと私益的なものが混在していますが、その最たる例が、既に存在する他人の登録商標と類似するものは登録が認められない、というものです。

審査官は、出願された商標が、既に存在する他人の登録商標と類似するものではないかを調べて、登録を認めるかどうかの判断をします。

この判断が誤りだと思う場合には、前記同様に、再考を促すための意見書を提出して、反論する(争う)ことになります。

拒絶理由通知を受け取っても慌てず焦らず


商標登録出願が初めてという方に多いのが、「拒絶理由通知」という文面を見て、完全に終了してしまったのではないかと誤解されるというものです。

前記の通り、「拒絶理由通知」は、審査官の暫定的判断ですので、まだまだ覆せる機会が残されています。

審査官の最終判断は、「査定」といい、拒絶の場合には「拒絶査定」となります。

この「拒絶査定」ですら、まだまだ争う余地が残されていますので、「拒絶理由通知」を受け取っただけで諦めるのは早いです。

「拒絶理由通知」を受け取った場合には、まずは依頼をした弁理士に、反論する余地があるかどうかの見解を求めるのが良いでしょう。


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