「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。
さて、今日のお題は「企業のマスコットキャラクターを安心して使い続けるには(著作権法編)」です。
前回の記事で、企業のマスコットキャラクターを使うには、著作権法と商標法の両方について、対応が必要であることをお伝えしました。
今回は、著作権法の観点から、解説していきたいと思います。
目次
- 著作権は誰のものか?著作者人格権にも注意が必要
- 著作権でトラブルになるパターンってどういう場合?
- 社内で作ったイラストなら問題ない?
著作権は誰のものか?著作者人格権にも注意が必要
企業のマスコットキャラクターのイラストが著作物になるということは、前回の記事でお伝えしました。では、その著作権は、一体誰のものなのでしょうか。
個人の方が描き起こしたものであれば、描き起こした方が著作者ということになります。そして、著作者が著作権者になるのが原則です。
このため、外部のイラストレータさんにマスコットキャラクターの制作を依頼した場合、対価を支払ってデータの納品を受けただけでは、著作権は移転しません。つまり、著作権はイラストレータさんのもののままということになります。
さらに、著作者には、著作権の他に、著作者人格権という別の権利も発生しますので、勝手に手直しをすることは認められていません。
したがって、当初伝えていた範囲(例えばチラシへの掲載)での利用は問題ないとしても、商品パッケージに使ったり、ホームページに掲載したり、何か手直しをしたりすると、著作権や著作者人格権を侵害することになるものと考えられます。
このように書くと、えっ!と驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、発注して納品を受けただけでは、著作権を譲渡したことにはならないのが基本です。
さまざまな場面で幅広く使いたかったり、後から手直しをしたいというような場合には、著作権を譲り受けておくことが非常に大切になります。
著作権でトラブルになるパターンってどういう場合?
トラブルになるパターンはいくつもありますが、イメージを持って頂けるよう前で挙げた例を使って一例をお示ししたいと思います。
前の例で、元々のイラストの制作費が数万円だったとしましょう。チラシ用ということで、その後しばらくして、そのイラストをホームページで大々的に使い、さらにそれをパッケージに使った商品が大ヒットしたとします。
そうすると、イラストレータさんとしては、自分が描いたマスコットキャラクターが良かったからではないか?と思われるかもしれません。そして、思い返せばそもそもチラシに使うとしか聞いていないぞ?ということを思い出すでしょう。
こうなると、トラブルの予感がしてきますね。著作権を侵害する行為は直ちに中止せよ、であるとか、損害を賠償せよといったような請求がされることになってきます。
以上は、あくまでも架空の話にはしていますが、よくある話です。こうならないように、著作権の譲渡を受けておくというのが、非常に大事になってきます。
なお、著作権の譲渡を受ける時には、専門家を入れて契約書を作成して、必要なことをしっかりと明記した上で、お互い合意できる内容を詰めていくことが大切です。
社内で作ったイラストなら問題ない?
他方で、外部のイラストレータさんにお願いして制作するのではなく、社内にいる絵の上手い方が制作したキャラクターであるという場合もあるでしょう。こうした場合は問題はないのでしょうか。
実は、ここにも落とし穴があるので注意が必要です。
もし、その制作が、その方のお仕事としてされたものである時には、「職務著作」という例外ルールが適用されることがあり、著作者は会社だということになる場合があります。
しかし、そのイラストが、その方のお仕事として制作されたものであるとしても、会社の名前で公表されないものだとすると、職務著作には該当しないことになります。
この場合、著作者も著作権者も従業員の方ということになりますので、勝手に会社が使うと、その従業員の方の著作権を侵害することになります。
また、その社内の方がプライベートで描いたイラストをマスコットキャラクターにしたというような場合には、同様に職務著作に該当しません。この場合、著作者も著作権者も従業員の方ということになりますので、同様に著作権侵害の恐れがあります。
商品やサービスが特にヒットせず、その方が勤務を続けているうちは、(いいかどうかは別として)あまり大っぴらに問題になることも少ないのかもしれませんが、法的には問題を抱えることになります。
商品やサービスがヒットしたり、あるいはその方が退職したりすると、トラブルが起きる可能性が高くなると考えられます。
「雇用しているのだから文句を言うな」と言うのは乱暴です。トラブルの芽を摘み、皆が納得できるように、社内の制作物であっても、社内ルールを策定したり、個別に契約を結んでおくというのが賢明な対応ということになります。
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