わかって納得の知財ブログ

047:【士業向け】士業の先生方に知っておいて欲しい知的財産のこと(商標と著作権を中心に)

「知的財産は難しい」とよく言われます。このblogは、知的財産に関する疑問・悩みに答えていく「解説」記事です。「知的財産が分かった」を目指して、すっと理「解」していただけるように噛み砕いて「説」明していきます。

さて、今日のお題は「士業の先生方に知っておいて欲しい知的財産のこと(商標と著作権を中心に)」です。

日本には、弁護士をはじめとするさまざまなサムライ業(士業)の方がいらっしゃいます。

それぞれ、専門分野は異なるでしょうけれども、具体的な事業活動に関与されている方は少なくなく、多くの場合、士業というのは創業や事業拡大、新規事業の立ち上げなど、事業の節目節目で、企業や事業者の方と接することかと思います。

本記事では、事業活動の節目に立ち会った先生方に知っておいて頂きたい知的財産のお話をお伝えしたいと思います。

目次


  • 知的財産って特許だけ?いえいえ、細かく色々と分かれています
  • 事業活動の節目で特に注意すべき知的財産とは
  • 中小企業・小規模事業者こそ知的財産権を活用すべき

知的財産って特許だけ?いえいえ、細かく色々と分かれています


知的財産というのは、その性質によって対象や保護方法が異なっており、ある一つの製品を見たときに、いくつもの知的財産が包含されているということも少なくありません。

具体例を挙げる前に、「いくつもの知的財産」とはどういうことか見ていきたいと思います。本項のタイトルで、「知的財産って特許だけ?」と書きましたが、実はこの表現すら正確ではありません。条文に従って、しっかりと見ていきましょう。

まず、知的財産について一般的な事項を定めた法律として、「知的財産基本法」という法律があり、「知的財産」と、これに対応した「知的財産権」についての定義が設けられています。

この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。

知的財産基本法第2条1項

この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。

知的財産基本法第2条2項

そして、知的財産権という権利が発生することの根拠法令として、発明について「特許法」、考案について「実用新案法」、植物の新品種について「種苗法」、意匠について「意匠法」、著作物について「著作権法」、商標について「商標法」といったように、個別の法律が定められています。

つまり、特許権や著作権、商標権といった知的財産権は、知的財産の性質によって、それぞれ別の法律によって付与されるものとなります。

スマートフォンを例に取れば、液晶やバッテリーなどには多くの特許発明が活かされており、また外観のデザインは登録意匠として保護されています。

また、各社のスマートフォンを見分けるために登録商標が付されています。ソフトウェアは特許発明として保護されるものですが、一方で著作物としても保護されうるものです。

今回はスマートフォンを例に挙げましたが、このように一つの製品を知的財産の目線で見てみると、様々な事柄が見えてきます。

事業活動の節目で特に注意すべき知的財産とは


これまでにない新規な創作をしたという場合、それが法律上の要件を満たせば、特許庁へ手続きを取ることにより、特許発明や登録意匠として独占的な排他権を獲得することができます。

では、こうした創作を伴わない場合、知的財産のことに注意を払う必要はないのでしょうか。

いえ、知的財産を気にしなくて良い事業というのは、ほとんど皆無に等しいと言っても過言ではないでしょう。

事業活動を行う場合、まず第一に、何らかの目印をもって顧客から認識してもらう必要があります。顧客から認識してもらう目印となるのが「商標」です。

なんらかの目印を使うにあたり、それが他人の商標権を侵害している場合には、事業活動に支障が出てしまいますので、商標法に従った対応が必要になります。

事業活動を認識してもらったら、その事業内容を顧客に伝える必要があります。それを一般にPRするときに利用される写真やイラストは「著作物」となることが少なくないでしょう。

他人が創作した著作物を無断で利用すれば、著作権侵害ということになりますし、他人が創作した著作物を勝手に改変してしまえば、著作者人格権との関係で問題になりますので、今度は著作権法に従った対応が必要になります。

商標は、特許庁に出願をして審査を通過して登録料を支払うと、登録を受けることができます。登録を受けると、その商標は登録商標となり、商標権が発生します。登録商標やこれと類似の商標を商標権者に無断で使うと、商標権侵害になってしまいます。

また、写真やイラストと言ったものは、創作した段階で自然発生的に著作権が生じますので、利用しようとするものが他人の著作物を利用するものである場合には、原則として著作権者の許諾を受けたり、著作権を譲り受けたりすることが必要となります。

中小企業・小規模事業者こそ知的財産権を活用すべき


このように、知的財産というのは、非常に身近な事業活動にも関わっているもので、規模が小さいから関係ないという性質のものではありません。

業種業態を問わず、ほとんどの事業においては商標登録が必要で、著作権についてのケアが必要ということになります。

また、自ら知的財産権を保有していれば、独占して使うもできますし、誰かに貸すこともできるようになります。更に、いつかは誰かに売るということもできるようになります。

商標権ひとつをとって見ても、これを持っていることで取引先と有利に交渉することもできることになります。また、競合他社と差別化ができることにより、自社製品のブランド化もできることでしょう。

このように、知的財産を保護し、保有しておくことでさまざまなメリットがあります。知的財産の活用や保護というのは、企業規模の大小を問わず、誰にも公平にチャンスが与えられているものですので、補助金・助成金も利用しながら、多くの方に知的財産を活用して頂きたいと思います。


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