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056:【受験生向け】弁理士試験に独学で合格した話⑤「難解な条文をどう扱うか|その2」

弁理士試験をどのように独学で乗り切って合格に至ったかをお伝えしています。過去記事は以下の通りですので、宜しければご覧ください。

さて、今日のお題は「難解な条文をどう扱うか|その2」です。前回は条文集の塗り分けについてお伝えしましたが、他のお話です。一度に書き切れませんでしたので、別の記事にしました。前回の記事と合わせてご参考にして頂ければ幸いです。

目次


  • 微妙に違う拒絶理由・無効理由・異議理由をどう覚えるか
  • 馬鹿にできないシール貼り
  • 覚えやすいように工夫をすることが短期合格の秘訣

微妙に違う拒絶理由・無効理由・異議理由をどう覚えるか


弁理士試験の試験科目は、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、著作権法、不正競争防止法、さらには条約と、非常に多岐にわたります。

この中で、短答式試験、論文式試験、口述式試験のいずれでも問われる、超重要科目が、通称「特実意商」と呼ばれる特許法、実用新案法、意匠法、商標法です。これらは、合格のためにはどれも無視することができない法律です。

これら4法は、法律上のルールに従って、権利を付与されたり、逆に権利を剥奪されたりするものですので、権利を付与する/しないための条件や、権利を剥奪する/しないための条件が規定されています。

既に勉強をされている方はご存知でしょうが、願書の内容について特許庁から指摘を受ける時は、「拒絶理由通知」という文書が送られてきます。そして、ここにいう拒絶理由というのは、法律上、こういう場合に拒絶理由に該当するということが規定されています。

また、一旦審査は通ったけれど、実は登録になってはいけないものだった、という場合もあるのですが、こう言うものは、無効理由や異議理由として、やはり法律に規定が設けられています。

これらが全くリンクしないか、または完全に一致していればそれほど大きな問題ではないのですが、微妙にズレているので厄介でした。と言っても、ズレていると書いているだけだとイメージがつきにくいでしょうから、特許法を例にして、見てみたいと思います。

まず、拒絶理由を列記しているのは、特許法第49条です。

第四十九条 審査官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
一 その特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項又は第四項に規定する要件を満たしていないとき。
二 その特許出願に係る発明が第二十五条、第二十九条、第二十九条の二、第三十二条、第三十八条又は第三十九条第一項から第四項までの規定により特許をすることができないものであるとき。
三 その特許出願に係る発明が条約の規定により特許をすることができないものであるとき。
四 その特許出願が第三十六条第四項第一号若しくは第六項又は第三十七条に規定する要件を満たしていないとき。
五 前条の規定による通知をした場合であつて、その特許出願が明細書についての補正又は意見書の提出によつてもなお第三十六条第四項第二号に規定する要件を満たすこととならないとき。
六 その特許出願が外国語書面出願である場合において、当該特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないとき。
七 その特許出願人がその発明について特許を受ける権利を有していないとき。

特許法第49条

次に、無効理由は特許法第123条に規定されています。

第百二十三条 特許が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許を無効にすることについて特許無効審判を請求することができる。この場合において、二以上の請求項に係るものについては、請求項ごとに請求することができる。
一 その特許が第十七条の二第三項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願(外国語書面出願を除く。)に対してされたとき。
二 その特許が第二十五条、第二十九条、第二十九条の二、第三十二条、第三十八条又は第三十九条第一項から第四項までの規定に違反してされたとき(その特許が第三十八条の規定に違反してされた場合にあつては、第七十四条第一項の規定による請求に基づき、その特許に係る特許権の移転の登録があつたときを除く。)。
三 その特許が条約に違反してされたとき。
四 その特許が第三十六条第四項第一号又は第六項(第四号を除く。)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたとき。
五 外国語書面出願に係る特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないとき。
六 その特許がその発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたとき(第七十四条第一項の規定による請求に基づき、その特許に係る特許権の移転の登録があつたときを除く。)。
七 特許がされた後において、その特許権者が第二十五条の規定により特許権を享有することができない者になつたとき、又はその特許が条約に違反することとなつたとき。
八 その特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正が第百二十六条第一項ただし書若しくは第五項から第七項まで(第百二十条の五第九項又は第百三十四条の二第九項において準用する場合を含む。)、第百二十条の五第二項ただし書又は第百三十四条の二第一項ただし書の規定に違反してされたとき。(以下略)

特許法第123条第1項

ちょっと細かいのですが、第49条第4号と、第123条第1項第4号を比較してみて頂くと、第36条第6項第4号違反が、拒絶理由だけれども、無効理由ではないことがお分かり頂けるかと思います。

こうした点は、実務をやっていると肌感覚でわかってくるところでもあるのですが、僕は実務に入る前に、講義も受けることなく弁理士試験に挑戦したので、この辺りの区別とか整理に結構戸惑ったよう記憶しています。

当時の僕は、この戸惑いをなんとかしてスッキリさせたい。丸暗記ではなく、何か見える化できないか、こう考えたのです。

馬鹿にできないシール貼り


以上のように、共通していたり共通していなかったりする拒絶理由・無効理由・異議理由について、どうしたら直感的に覚えていけるかということに腐心したわけですが、そこで編み出したのが、「シール貼り」でした。

何もデコってモチベーションを上げるという話をしたいのではなく、無効理由となっている条文、拒絶理由になっている条文というように、それぞれに色違いのシールを貼って、パッと見ただけでその条文がどの理由に該当しているのかが一目瞭然にできるようにしたのです。

このやり方をするにあたり、個人的に気に入っているのは、NICHIBANの「マイタック」の「カラーラベル」です。

製品ページはこちら|マイタックカラーラベル

赤・黄・青・緑・しろの5色が1パックになっていることに加え、サイズかんがジャストフィット!ということで、該当する条文のところにペタペタ貼っていくのです。

具体的には、無効理由を赤色、拒絶理由を黄色、異議理由を緑色に貼り分けました。

そうするとどうでしょう。

無効理由かつ拒絶理由の条文のところには、赤色と黄色のシールが貼られていますので、どちらにも該当するのだということが、パッとみて分かります。

一方、前述の第36条第6項第4号では、黄色のシールが貼られているだけですので、拒絶理由でしかないなということがパッと分かります。

覚えやすいように工夫をすることが短期合格の秘訣


このように、マーカーペンとシールを駆使して、自分なりの条文集を作り上げていきました。ここまでは、料理で言うところの「仕込み」のようなもので、ここから実際に使い込んでいきます。

次回は、ではどのような教材を使ったのかを書いていきたいと思いますので、ご興味のある方は、次回の記事もご覧いただけたら幸いです。


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