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070:【事業者向け】中国で商標登録を受けたい場合、直接出願と国際出願(マドプロ出願)のどちらがいいか

日本の隣の大国である中国。多くの日本企業が中国を大きな市場と捉え、進出しています。

中国に事業進出するということは、商品やサービスで対価を得るということですから、商標登録が欠かせません。

中国は、商標の国際出願についてのマドリッド協定議定書(マドリッド・プロトコル)の加盟国ですので、中国において商標登録を受けようとする場合、直接出願する方法と、国際出願(マドプロ出願)をする方法のどちらかが選べます。

どちらも可能というと、どちらがいいのかということが気になるかと思いますので、少し解説してみようと思います。

目次


  • スピード重視なら直接出願が圧倒的に早い
  • 直接出願は費用面でも決して高くはない
  • 多区分の場合や他国と同時出願なら国際出願(マドプロ出願)も検討の余地あり
  • 指定商品・指定役務が特殊な場合は国際出願(マドプロ出願)がいい(かも)
  • 優先権を主張したい場合は国際出願(マドプロ出願)の方が扱いやすい
  • 具体的なケースに応じて使い分けることが重要

スピード重視なら直接出願が圧倒的に早い


直接出願の場合、最近の状況ですと、出願をしてから審査結果が出てくるまでに早ければ4ヶ月程度となっています。

一方の国際出願(マドプロ出願)ですが、これは日本の特許庁と世界知的所有権機関(WIPO)を経由して中国に出願がされるので、その分タイムラグが生じてしまいます。

国際出願(マドプロ出願)では、どれだけ急いでも流石に4ヶ月で審査結果が得られるものではありませんし、WIPOから中国商標局への通報から18ヶ月が経過しないと審査結果が確定しないということもあります。

よって、スピード重視である場合には、直接出願に軍配があがります。

直接出願は費用面でも決して高くはない


とはいえ、直接出願の場合には現地代理人を選任する必要がありますので、費用が高くつくのでは?と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、国際出願(マドプロ出願)の場合には世界知的所有権機関(WIPO)の手数料(7〜10万円程度)を支払わないといけませんので、国際出願(マドプロ出願)の方が安く済むとは限りません。

むしろ、少ない区分までの出願である場合には、直接出願の方が安く済むこともあります。

多区分の場合や他国と同時出願なら国際出願(マドプロ出願)も検討の余地あり


国際出願(マドプロ出願)は、多区分・多数国という場合にコストメリットが出てくる制度ですので、多くの区分を指定する場合や、複数の国への出願をする場合には、国際出願(マドプロ出願)の方がトータルのコストを抑えられることが見込まれます。

しかし、前述のように直接出願と比較して、どうしても時間はかかってしまうので、スピードとコストを天秤にかけて判断をすることが必要です。

ただし、国際出願(マドプロ出願)の場合、確かにスピードは落ちますが、更新などの管理面でのメリットもありますので、出願時のコストだけで決めてしまうのはややもったいないとも言えます。

指定商品・指定役務が特殊な場合は国際出願(マドプロ出願)がいい(かも)


中国商標局は、審査を効率化するため、直接出願の場合、原則として予め商標局が定めた商品・サービスのリストに記載されているものしか受け付けていません。

このため、当該リストに記載されていない商品・サービスを願書に書いて出願をして、審査官が認めない場合には、削除するか、リストに掲載されているアイテムに置き換えるしかなくなります。

意見を述べる機会も与えられないので、審査官を説得するチャンスもありません。

このため、実際の商品やサービスがリストに書いていないものである場合には、適正な保護を得る観点から、国際出願(マドプロ出願)を活用することが検討されます。

ただし、国際出願(マドプロ出願)ならどんな商品・サービスでも認められるというものではありません。直接出願だったら掛からなかったであろう拒絶理由が発生する場合もゼロではないということは知っておいてくださいね。

優先権を主張したい場合は国際出願(マドプロ出願)の方が扱いやすい


日本の出願に基づいて優先権を主張する場合でも、商標局の基本的なスタンスは同じですから、日本の出願に記載された商品・サービスが、中国商標局が定めた商品・サービスのリストに記載されているものであることが確実な対応であると言えます。

しかし、中国商標局が定める商品・サービスが日本で通用するものであるとは限りませんので、中国出願のための日本の願書に記載の商品・サービスを中国流にしておくというのもやや不思議な話です。

他方、国際出願(マドプロ出願)をする場合、前記のリストの問題は当てはまらないので、比較的自由度を持って優先権主張ができることになります。

優先権を伴う直接出願の場合、優先権がない場合よりは商品・サービスの表示については緩和して審査をしてもらえるとも聞くところですが、補正指令を受けることを避けるという観点からは、国際出願(マドプロ出願)の方が安全だと言えます。

具体的なケースに応じて使い分けることが重要


以上見てきましたように、直接出願と国際出願(マドプロ出願)には一長一短あります。

具体的なケースや戦略によって、どのように進めることがいいかということが変わってきますので、出願を検討される場合には、基礎出願(日本の出願)の段階から、中国商標・国際商標に詳しい弁理士に相談をして、手続きを進めることが肝要であると言えます。


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