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074:【事業者向け】著作物について利用をする際の契約における著作権法上の留意点(出版権と利用権)

エッセイや小説を執筆したり、絵画を描いたり、あるいは写真を撮影したりすると、これらの作品の多くは著作物となります。そして、それが著作物である場合には、著作権が発生します。

ご自身がその作品を創作したとすると、その作品についての著作者であり、著作権者でもあるということになります。著作権を保有していれば、その作品を自分で印刷するなどして配ることはもちろん自由ですが、他人に許諾して利用してもらうこともできます。

今日は、その許諾に関して、出版という観点から触れてみたいと思います。

目次


  • 著作物を他人に利用させるときは契約で合意をする
  • 令和2年著作権改正について
  • まとめ

著作物を他人に利用させるときは契約で合意をする


さて、冒頭で触れたエッセイや小説、絵画、写真といった作品は、世に広めるためには、SNSに掲載するというやり方もありますが、やはり書籍化するというのが、今の時代でも影響力が大きいやり方かと思います。

それでは書籍化しようという場合、エッセイや小説、絵画、写真といった作品を「複製」することになります。著作権法では、「複製」する権利は、著作権者が独占して有していますので、著作権を保有していれば、自分で複製することはもちろん自由です。

あるいは、その権利に基づいて、他人に著作物の利用をさせることもできます。誰かに著作物の利用をさせるには、さまざまな条件がついて回りますから、単に「はいどうぞ」ではなく、しっかりと契約を結ぶべきでしょう。

この契約は、法的には口頭での合意でも成立しますが、将来のトラブル防止という観点からは、契約書なり合意書、覚書なりの文書にしておくことが良いです。利用をする側としても、曖昧な契約は紛争の元になりますので、しっかりと合意をしておきましょう。

では契約をするとして、著作権者からどのような権限を付与してもらうかは、大きく分けてふたつのやり方があります。ここからは、利用する側の立場に立って考えていきたいと思います。

その1:出版権を設定してもらう

まず一つ目のやり方として、「出版権」の設定を受ける方法があります。出版権の設定の受けると、その契約の範囲内で、頒布目的で原作のまま複製する等の権利を独占して保有することができるようになります。

この意味で、出版権はとても強い権限を与えられるものになりますが、強い権限があることの裏返しで、出版する義務を負います。

その2:利用権を設定してもらう

もう一つのやり方が、「利用権」の設定を受けるやり方です。「ライセンスを受ける」とも言います。利用権は、その契約条件により、独占的とするかしないかも含め、柔軟に決めることができます。

利用権の設定を受けただけでは、利用する義務のようなものは発生しませんので、出版権より入りやすいものになるかと思います。

令和2年著作権法改正について


従前までは、これら出版権にしろ利用権にしろ、著作権者から権限を付与されたとしても、その権限があることを文化庁に登録しないと、後から著作権を譲り受けた人などに、自らの出版権や利用権を主張することができない制度になっていました。

つまり、登録を受けていないと、後から著作権を譲り受けた人に、自分に出版権なり利用権があることを主張できないことになる結果、出版・利用が継続できないという事態に陥ることがありました。

しかし、令和2年の著作権法改正により、利用権については、文化庁への登録がなくても後から著作権を譲り受けた人などに、自らの利用権を主張することができることになりました。出版権について他人に主張するためには、登録が必要という点は変わりありません。

登録をしなくても当然に他人に主張(=対抗)することができる制度ということで、「当然対抗制度」と呼んでいます。令和2年の著作権法改正で、利用権について当然対抗制度が導入された、ということになります。

余談ですが、登録をしなくても当然に他人に主張(=対抗)することができる制度ということで、「当然対抗制度」と呼んでいます。それっぽく言うと、令和2年の著作権法改正で、利用権について当然対抗制度が導入された、というような言い方になります。

まとめ


誰かが創作した作品を借りてビジネスを行おうという場合には、契約により、出版権や利用権の設定を受けることが大切になります。

しかし、著作権者から設定を受ける権限が、出版権なのか利用権なのかにより、得られる効果が変わってきます。

言い換えると、この法改正により、利用権の活用が一層促進されることが期待される一方で、契約書に出版権と書かれているか、それとも利用権と書かれているかで法的効果が大きく異なります。

契約を結ぶときには、一体どの権限を付与してもらうのか、注意深く確認をしないといけないことになりました。

どのようなスキームでビジネスを行いたいか、専門家に相談しながら契約条件と合わせて十分に検討を重ねていくことが大切です。


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