わかって納得の知財ブログ

078:【スタートアップ向け】IPOを目指すスタートアップが上場審査を見越して早期に取り組むべき商標登録について

「IPO」とは、「Initial Public Offering」の頭文字を取ったもので、「株式公開」のことを指します。スタートアップの方の中には、IPOを目標としている方も少なくないと思います。

しかし、スタートアップ事業に取り組んでいると、その事業に注力しすぎるあまり、事業は成長したものの、いざIPOが見えてきた頃になって、商標について何もしていなかったことに気がつくということもあり得ます。

本記事では、IPOを目指す方がなぜ商標について早期の対応が必要かを、上場審査の点も考慮して解説していきます。IPOを目指している方はもちろん、そうではない方にも、なぜそれほど商標が大切かをお分かり頂けるよう、分かりやすくお伝えします。

目次


  • 上場審査では商標のことは確実にチェックされる
  • 上場審査で指摘された時点では手遅れな場合もある
  • 商標が登録されるまでには時間がかかる
  • 他人の商標権を侵害しては事業の継続が困難になる
  • スタートアップの初期の段階で商標権を確保することが重要

上場審査では商標のことは確実にチェックされる


上場審査では、様々な事項についての審査がされます。中でも、事業の安定性や継続性は、株式公開にあたっては重要な項目です。

ここで、上場しようとする企業が、もし商標権を保有していなかったり、保有している商標権が不十分だったりすると、他人に同一・類似のブランドを使用されることになる可能性があります。

他人に紛らわしいブランドを使用されると、自社ブランドが他のものに紛れてしまい、ブランド価値が高まらないばかりか、機会損失、ひどい時には風評被害の恐れまであると言えます。

またこればかりでなく、他人が自社ブランドと同一・類似の商標についての商標権を保有することになると、他人から差止請求や損害賠償請求を受ける可能性が出てきます。

そうすると、自社の事業をストップしたり、本来は不必要だったはずの多額の支出を迫られることになります。

このように、商標権を適切に保有しているかどうかというのは、言い換えれば「商標に起因するリスクがどの程度あるか」ということに繋がってきます。

このため、商標権を適切に保有しているかどうかというのは、事業の安定性・継続性を判断する上で非常に重要なファクターということになり、上場審査ではしっかりとチェックされているという次第です。

上場審査で指摘された時点では手遅れな場合もある


もし上場審査において商標権のことを指摘されたために、その時点から商標登録に向けて取り組んだとしても、確実に商標権が確保できるかは不透明です。

商標の世界では、早い者勝ちの「先願主義」という制度になっているため、一番早い日に願書を提出した人が優先することになります。

言い換えると、商標は、誰が先に使っていたかという点ではなく、誰が先に特許庁に願書を提出したかという点で判断されます。

上場審査で商標権を取得していない、又は保有している商標登録の内容が不十分である点が指摘された場合、この点は解消させなければなりませんが、その時点で既に他人が同一・類似の商標について願書を提出していたとすれば、その他人が優先することになります。

商標が登録されるまでには時間がかかる


そもそものお話ですが、商標登録というのは、そうすぐに完了するものではありません。

商標登録を受けるためには、特許庁に願書を提出して、審査を通過して登録料を納付する必要があります。

審査と言っても、願書を提出してすぐに審査が行われるというものではなく、通常、特許庁に願書を提出してから審査結果が出てくるまでには、6〜10ヶ月程度の時間を要しています。

このため、上場審査で指摘を受けてから対応していては、上場時期が遅れることは避けられません。

また、商標登録を受けるためには特許庁で審査を受けるということですから、それはつまり、審査で拒絶される可能性もあるということです。

同一・類似の商標が既に出願されていたり登録されていたりすると、自社の商標の登録を認めない「拒絶理由通知」という通知が発せられることになります。

もちろん、「拒絶理由通知」は審査官の一応の判断で、確定的なものではありませんので、反論などによって判断を覆せれば審査を通過して登録を受けることもできます。

しかし、そのためには更に余計に時間がかかりますし、最悪の場合、審査結果が覆らないということも可能性としてはゼロではありません。

こうなるとますます上場が遠のきますし、審査結果が覆せない場合には、自社ブランドの変更もやむなしということになります。

他人の商標権を侵害しては事業の継続が困難になる


他人の商標登録があるという理由で自分の商標を登録できない場合というのは、どういうことかと言いますと、それはつまり、その他人の商標権を侵害している状態だということです。

商標権は、日本全国に効力が及ぶ強力な独占権であり、他人による無断使用を排除することができるものです。

このため、商標権を侵害していると、上述のように、差止請求を受けたり損害賠償請求を受けたりすることになりますので、事業を安定して継続することが難しくなります。

事と次第によっては、商標トラブルをきっかけとして、ユーザーが離れて行ったり、競合他社に出し抜かれたり、多額の賠償責任を負うことにもなりかねず、企業の存亡にも関わってきます。

「たかが商標、されど商標」とはよくいうもので、他人の商標権を侵害してしまうと、事業の継続が難しくなるという点は、肝に銘じておいて頂ければと思います。

スタートアップの初期の段階で商標権を確保することが重要


このように、商標の対応というのは、後手に回っていいいことはひとつもありません。

商標は、早い者勝ちのルールになっているので、1日も早い対応が求められます。

このため、望ましくは創業前から手を打っておくのがベストであり、そうでなくとも創業初期には商標権の確保に向けて動き出す必要があります。

事業を開始しているにもかかわらず、商標について対処をしていない場合には、(IPOを目指すかどうかに関わらずですが)直ちに対応が必要と言えます。

スタートアップ企業が将来を見越してどのように商標権を確保していくかは、よくよく商標を専門とする弁理士と相談の上、進めていく必要があります。


<<お問い合わせはこちらから>>

この記事の内容について詳しくお知りになりたい方は、
以下のボタンからお気軽に当事務所までご連絡ください。


にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ
にほんブログ村 ランキング参加中です!

PAGE TOP