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082:【個人向け】自分が著作者であることをどのように対外的に示すか(著作者の推定規定と実名の登録について)

写真や絵画、音楽などの著作物を創作すると、著作権と著作者人格権を取得します(著作権法17条1項)。このためには、行政庁への手続や公示は必要なく(同条2項)、著作物を創作した時点で、その人が自動的に著作者となるとともに、著作権と著作者人格権を取得するのが原則です。

ところで、ある著作物について、誰が著作者なのかという点は、著作権が手続も公示も必要としないで発生することから、しばしば不明確になります。

著作権法では、どういった表示で公表したのかによって法的効果の取り扱いを分けていますので、本日は、この点について解説をします。

目次


  • 実名・周知な変名での公表
  • 無名・変名での公表
  • 著作者の推定で立証負担が軽減される
  • まとめ

実名・周知な変名での公表


まず、著作物を実名で公表した場合、および、周知な変名で公表した場合には、その表示された者が、その著作物の著作者と推定されることになっています(同法14条)。

それぞれ、少し解説が必要ですので、もう少し詳しく見ていきましょう。念のため、条文を挙げておきます。

第十四条 著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に、その氏名若しくは名称(以下「実名」という。)又はその雅号、筆名、略称その他実名に代えて用いられるもの(以下「変名」という。)として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定する。

著作権法第14条

まず、「実名」とは、文字通りその人の本名を言いますが、法人等における職務著作もありうるので「名称」も含まれます。

次に、「周知な変名」です。「周知」という点について、言葉の意味としては「広く人の間に知れ渡ること」を指しますが、どの程度知れ渡っていることが要求されているかは、著作権法の条文からは明らかではありません。

しかし、「実名」と並列して記載されていることとのバランスを考えれば、実名と同視しても良いくらいに浸透していることが必要と考えるべきでしょう。

また、「変名」には、「雅号」「筆名」「略称」「実名に代えて用いられるもの」をいうと規定されています。ペンネームやハンドルネームがこれに当たります。

ちなみに、「公表」についても条件があり、実名または周知な変名を、著作物の原作品に表示するか、公衆への提供・定時の際に、通常の方法で表示をする必要があります。

無名・変名での公表


では、著作物の公表の際に、名前を表示なかった場合や、変名が周知でなかった場合はどうなるのでしょうか。

ペンネームやハンドルネームが変名に当たるということは前述の通りですが、変名で公表した著作物は、そのペンネームやハンドルネームが周知なものでないと、ご自身が著作者だということの推定が働かない、ということになります。

無名の場合も、誰が著作者かが書いていない以上は、推定を受けることはできません。

しかし、それでは困る方もいらっしゃるでしょうから、著作権法では、実名の登録制度を設けています(同法75条1項)。

第七十五条 無名又は変名で公表された著作物の著作者は、現にその著作権を有するかどうかにかかわらず、その著作物についてその実名の登録を受けることができる。
2 (略)
3 実名の登録がされている者は、当該登録に係る著作物の著作者と推定する。

著作権法第75条

無名で公表されたり、周知でない変名で公表されたりした著作物について、実名を「登録」することで、その登録された人が、その著作物の著作者だと推定してもらえることになっています。

著作者の推定で立証負担が軽減される


著作者の推定が受けられるというのは、紛争が起きたときに効いてきます。

誰が著作者かという点が争いになった時に、推定が得られないと、自らが著作者だという点を積極的に立証していく必要があります。

しかし、法律上の推定が得られると、争う側(つまり訴訟の相手方)が反証を挙げていくことが求められるようになります。

つまり、訴訟になった時に、ご自身が著作者だという証拠を集めて積極的に主張・立証をしていく必要がなくなるということになり、負担が大幅に軽減されるということになります。

まとめ


以上、著作物の公表名義の違いによる効果の違いをお伝えしてきました。

著作物の公表の際に、実名や周知な変名で公表しない場合には、実名の登録をしておくことが将来の備えとしては重要になってきます(実名で公表したものについて実名の登録はできません)。

ご自身の変名が周知かどうかは、訴訟で争点になる可能性もありますので、よほどの著名人でもない限りは、変名で公表する際は原則として実名の登録を受けておくというのが、実務的な対応になるかと考えられます。

当事務所では、個別具体的なケースに応じた対応策についての相談をお受けしておりますので、お気軽にご相談ください。

なお、どのような名義で公表したかは、実は著作権の存続期間にも関わってきます。これについては、回を改めて解説したいと思います。


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