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083:【写真家・漫画家・画家・小説家向け】印税収入にも関わってくる⁉︎著作物の公表名義の違いによる著作権の存続期間の違い

昨日の記事で、著作者の推定と実名の登録について解説をしました。その終わりに、著作物の公表名義が違うことによって著作権の存続期間に違いが生じるとお伝えしましたので、今日はこの点についてお伝えしていきたいと思います。

目次


  • 著作権の存続期間は原則として著作者の死後70年
  • 実名または周知の変名の著作物の取り扱い
  • 無名または変名の著作物の取り扱い
  • 具体的に考えてみる1:実名または周知の変名の著作物の場合
  • 具体的に考えてみる2:無名または変名の著作物の場合

著作権の存続期間は原則として著作者の死後70年


著作物を創作すると、手続も公示もすることなく自動的に著作権が発生します(著作権法17条)。

その著作権は、著作物の創作をしてから著作者の死後70年存続するというのが原則です(同51条)。

しかし実は、この存続期間は、どのように公表するかによって変わってきます。

具体例も以下に記載しますが、事案によっては数十年単位で存続期間が変わってくる場合もありますので、早速みていきましょう。

なお、著作権の存続期間に関しては、今回とは違った観点から以下の記事で触れていますので、よろしければご覧ください。

010:【一般向け】著作権が消滅したものが復活?著作権の存続期間と戦時加算などの特例について

実名または周知の変名の著作物の取り扱い


著作物の中には、公表されるものとされないものがありますが、公表された著作物は、その公表名義の違いで存続期間が変わってきます。

実名で公表されたもの及び周知の変名で公表されたものは、原則通り、著作者の死後70年まで著作権が存続します(同52条2項1号・3号)。

無名または変名の著作物の取り扱い


一方、無名で公表された著作物や周知でない変名で公表された著作物は、その著作物の公表後70年が著作権の存続期間となります(同52条1項本文)。

ただし、公表されるのが遅れて、公表後70年を経過する前に、死後70年を経過していることが判明する場合には、原則通り死後70年ということになります(同52条1項但書)。

具体的に考えてみる1:実名または周知の変名の著作物の場合


イメージが湧きやすいよう、具体的に数字を挙げていきます。まずは実名または周知の変名の著作物の場合を考えたいと思います。

あくまでも例ですので、以下では「写真」を題材に記載しますが、読者の皆様それぞれのお立場に応じて、「漫画」「絵画」「小説」に読み換えていただけたらと思います。

ある写真を撮影したのが、2021年11月28日だとします。撮影した時から著作権は発生しますので、存続期間の開始時期は2021年11月28日からということになります。

ここで、撮影した人が、2022年4月1日にその写真を公表し、2072年8月1日に亡くなったと仮定しましょう。

この場合、実名・周知な変名で写真を公表していた場合には、原則通り死後70年ということになります。

そして、その終期の計算は、死亡・公表した翌年から起算することになっていますので、2073年1月1日を起算点として70年となります(同57条)。

この結果、実名・周知な変名で写真を公表していた場合の著作権の存続期間は2143年12月31日までということになります。

撮影時が2021年11月28日ですから、120年以上も保護されるというのは少し驚かれるかもしれませんが、これほどまでに保護されるのが著作物ということになります。

特許権が出願後20年ということと比較しても、保護期間が非常に長期だということがわかります。

具体的に考えてみる2:無名または変名の著作物の場合


次に、無名または変名の著作物の場合です。こちらは、前述の例で言えば、2022年4月1日にその写真を公表しましたので、この公表後70年となります。

その終期の計算は、前述のように死亡・公表した翌年から起算することになっていますので、2023年1月1日を起算点として70年となります(同57条)。

この結果、無名または変名で公表をしていた場合の著作権の存続期間は、2093年12月31日までということになります。

70年以上の保護期間ということですので、特許権に比べれば十分長い保護期間ですが、実名・周知の変名の著作物と比較すると見劣りしてしまうことは否めません。

実名で公表しないなら実名の登録をしておくべき


同じタイミングで創作されたものなのに、公表名義が違うことにより、50年も存続期間に違いが出るというのは驚きですね。

このような公表名義の違いでこれほどに大きな違いが出るというのは如何なものかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、この点については著作権法にしっかりと手当がされています。

無名・変名で公表された著作物であっても、公表後70年の期間内に「実名の登録」があった時には、原則通り死後70年とする旨が規定されています(同52条2項2号)。

つまり、たとえ無名・変名の著作物であっても、「実名の登録」をするだけで、公表してから自分が死亡するまでの間の存続期間を追加で確保できてしまうということです。

著作物というと、印税収入という夢物語もしばしば耳にしますが、著作権が切れてしまえば印税も途絶えてしまいます。

いつ何がきっかけでバズるかがわからない現代です。長期にわたって権利を維持するためには、忘れる前に「実名の登録」をしておくことが大切だということを覚えておいて頂ければと思います。

当事務所では、個別具体的なケースに応じて著作権の存続期間の算定や対応策の検討に応じていますので、お気軽にご相談ください。


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