昨日の記事で、どの名義で公表するかによって著作権の存続期間が変わってくるというお話をしました。
今日は、著作権が切れた作品についてお伝えしていきたいと思います。
目次
- 著作権切れの作品を「パブリック・ドメイン」という
- パブリック・ドメインは自由に利用することができる
- 著作者の死後であっても人格的利益を害するような利用はNG
著作権切れの作品を「パブリック・ドメイン」という
他人の著作物を無断でコピーをしたりインターネットに公開するというのは、原則として著作権を侵害する行為となります(著作権法21条・23条ほか)。
当たり前のことですが、著作権を侵害するというからには、著作権が有効に存在している必要があります。
創作された写真なり絵画なりの作品が、著作物である限り、自動的に著作権は発生し、原則として著作者の死後70年間存続します(同51条)。
では、その期間が経過したものは、どうなるのでしょうか。
著作権の存続期間が満了となりますと、著作権は存在しないものとなります。
著作権が存在しないということは、その著作権の元となる著作物について、どのように利用することも問題ないということになります。
このように、誰でも利用することができるようになった著作物のことを、「パブリック・ドメイン」(Public domain。略して「PD」とも)と言います。
「Public」は「公共の」という意味で、「domain」は「領土」とか「領域」という意味ですので、転じて「公有」とか「公共の財産」というような意味合いになります。
パブリック・ドメインは自由に利用することができる
さて、著作権が切れてパブリック・ドメインとなったものは、著作権が消滅している以上、どのように利用しようとも著作権を行使されることはありません。
したがって、その作品を利用するにあたっては、誰かの許可を得ることも料金を支払うことも必要ありません。
「青空文庫」というウェブサイトでは、こうしたパブリック・ドメインとなった文学作品をオンライン上で電子書籍として公開しています。
「青空文庫」では、2021年11月現在で17000弱の作品が公開されており、そのうちパブリック・ドメインとなった作品が16500弱、自由に読んでもらって構わないとされたものが400弱となっています。
過去に誰かが創作し、現代でも愛される作品に気軽に触れることができるのも、著作権という制度あってのものといえます。
著作者の死後であっても人格的利益を害するような利用はNG
ところで、前述のように、パブリック・ドメインとなったものは、どのように利用をしようとも著作権を行使されることはありません。
しかし、著作権法では、「著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない」と規定がされていることには注意が必要です(著作権法60条本文)。
著作者人格権には、「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」の3種類があり、それぞれ全く異なる権利となっています。
単に作品を読んだり鑑賞したりする分には全く気にする必要はありませんが、二次利用をする場合には、これらの人格権に気をつけておく必要があります。
なお、死後の人格的利益の侵害に対しては、死亡した著作者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹のみが法的措置を執れることになっていますので(同116条1項)、これらの遺族も存しなくなっていれば、あとはモラルの問題ともいえます。
たとえ著作権が切れたとしても、著作者や作品に対するリスペクトの気持ちを忘れずに著作物を利用していきたいですね。
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