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089:【個人・事業者向け】日本と中国の商標制度の違い(前編:出願準備〜実体審査前)

一昨日の記事で、日本も中国も、商標登録は早い者勝ちの先願主義を採用し、登録を受けることによって商標権が発生する登録主義を採用しているとお伝えしました。

共通点に目を向けてみれば同じようなところはあるのですが、実際、かなりの違いがあります。今日はそんな日本と中国の商標制度の違いについて、解説したいと思います。まずは出願の準備段階から実体審査を受けるまでのところについてです。

目次


  • 中国では1区分目と2区分めの印紙代が同じ
  • 中国では出願時の添付書類が必要
  • 中国でも類似群(サブクラス)を採用しているが区分けは異なる
  • 中国では商標局が定めるリストから商品・サービスを選ぶのが原則
  • 指定する商品・サービスなどの方式審査が先行する

中国では1区分目と2区分めの印紙代が同じ


日本では、1区分目の出願の時に必要な印紙代(特許庁の手数料)が12,000円で、2区分目以降が8,600円ずつとなっています。

一方の中国では、1区分目か2区分目以降であるかを問わず、1区分あたり300人民元(約5,400円)となっています。

日本では、1つの区分の中でいくつ商品・サービスを指定しても料金に変わりはありませんが、中国では、1つの区分あたりで10個を超えた商品・サービスについては、1つごとに30人民元(約540円)が加算されますので、多くのアイテムを指定する時には注意しましょう。

中国では出願時の添付書類が必要


日本では、出願をするときに委任状などの添付書類は特に求められていません。当事務所にご依頼いただく際に、何か書面を手配していただく必要はありません。

一方の中国では、出願をする時には委任状と身分証明書の写しが必要になります。身分証明書は、会社であれば現在事項全部証明書や履歴事項全部証明書といった登記簿謄本を提出します。個人であれば住民票の写しということになります。

中国でも類似群(サブクラス)を採用しているが区分けは異なる


日本では、審査の便宜を図るために、どの商品がどの商品やサービスと類似するかを、個別にコードを振ることで予め定めています。このコードのことを類似群コードと呼んでいます。

中国でも似たようなコードによる振り分けがされていて、サブクラスと呼んでいます。

しかし、同じ区分と言っても、その中に属する商品・サービスの区分けは異なっています。

例えば洋服などが属する区分である第25類は、審査基準上、日本では14の類似群が割り当てられていますが、大きく6つのグループにまとめられています。

一方の中国では、12のサブクラスが割り当てられていますが、一部には「単一商品」というものがあり、同じサブクラスが割り当てられているのに互いに類似しないという商品もあります。

中国では商標局が定めるリストから商品・サービスを選ぶのが原則


日本では、出願の時に願書に記載して問題ない商品・サービスの表示が審査基準に定められていますが、ここに載っていないものでも、審査官が個別に「明確な表示か」を審査してくれ、もし不明確だという場合には、審査官に説明をしたり表現を修正したりする機会を与えてくれます。

一方の中国では、同様に出願の時に願書に記載して問題ない商品・サービスの表示が審査基準に定められていますが、ここに載っていないものは要注意です。審査基準に載っていない表示であっても願書に記載をすることはできますが、審査官が「不明確だ」と考えた場合、削除するか審査基準に載っている表示に置き換えるかの2択を迫られます。

中国では、日本のように、審査官に説明をしたり表現を修正することはできません。

事案によっては、中国での出願で、あえて積極的な表示でトライすることもありますが、基本的には審査基準に載っている商品・サービスを選んで出願をすることが安全と言えます。

指定する商品・サービスなどの方式審査が先行する


前述のこととも少し重なりますが、中国では他人に商標と類似しているかなどの実体的な審査を行う前に、願書に書かれている内容が方式的に問題ないかの方式審査が先に行われます。

この方式審査に、指定する商品・サービスが中国実務上明確であるかの審査も含まれており、これを通過しないと正式に受理されたことになりません。

方式審査で引っかかると、補正指令が発せられ、期限までに対応する必要があります。

中間まとめ


以上、出願の準備段階から実体審査前までの、日本と中国の違いをお伝えしてまいりました。

既にだいぶ違いがあるなということは感じて頂けたのではないかと思います。

後編では、実体審査以降の違いを解説していきますので、ぜひ後編もご覧頂ければ幸いです。


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