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093:【個人・事業者向け】辞書にある言葉(既成語)が商標登録されないという誤解について

時事ネタというわけではありませんが、辞書に載っている言葉は一般名だから商標登録されませんよね?という話は、巷ではよく聞く話です。

この理解は、多分に誤解を含んでいますので、少し解説をしてみたいと思います。せっかくですので、これを機会に勉強して行って頂ければと思います。

目次


  • 辞書に載っている言葉の登録商標は数多くある
  • 一般名 ≠ 普通名称
  • 登録されるかどうかは商品・サービスとの関係次第

辞書に載っている言葉の登録商標は数多くある


「辞書に載っている言葉が商標登録されない」という理解は、冒頭にもお伝えしましたが、正確ではありません。

理由からお伝えしてしまっても良いのですが、いきなり理屈の話をするのもなんですから、まずは具体的な登録例を見てみたいと思います。まずは単語を見てみましょう。

  • 「華」登録5600760他
  • 「桜」登録5941378他
  • 「アップル」登録5847318他
  • 「タクシー」登録5207198
  • 「温泉」登録5948575
  • 「ペットボトル」登録5118925

如何でしょうか。どれも、図形などとの結合ではなく、これらの各文字のみからなる商標として登録されているものです。

次に熟語を見てみたいと思います。

  • 「TRUE STORY」登録6456982
  • 「LOVE STORY」登録1748612
  • 「LOVE LETTER」登録5574625他
  • 「千客万来」登録5647551
  • 「五大陸」登録5018123
  • 「安全運転」登録5857479他

どれも、日常生活で使うことがありそうな言葉ではないでしょうか。

このように、辞書に載っている言葉やその組み合わせであっても、商標登録されていることはよくある話です。

一般名なのになぜ?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんので、次項にて、商標法上の概念である「普通名称」との違いを整理してみたいと思います。

一般名 ≠ 普通名称


サブタイトルからも見え見えなように、「一般名」は「普通名称」とは異なる、ということがお伝えしたいことになります。

まずはそれぞれの言葉の定義を見てみたいと思います、

デジタル大辞泉によれば、「一般名」とは、一般に広く使用されている名称をいうとされます。

一方、「普通名称」とは、取引業界において、その商品又はサービスの一般的名称であると認識されるに至っているものをいうとされます(特許庁ホームページ)。

登録を受けようとする商標が、登録内容として指定する商品やサービスとの関係で、一般的名称であると認識されている場合には、それはもはや「普通名称」となります。そして、普通名称は、商標登録を受けることができません(商標法3条1項1号・同15条)。

具体例で考えますと、飲料用容器の一種である「ペットボトル」という商品の一般的名称は、「ペットボトル」です。

「自動車による輸送」というサービスについての「タクシー」も、このサービスとの関係では、やはり一般的名称となります。

これらの場合、「ペットボトル」も「タクシー」も、商品・サービスとの関係で一般的名称ということですから、法的には「普通名称」ということになります。

ですから、商品「ペットボトル」について商標「ペットボトル」が商標登録されてしまうかというと、そういうことはありません。

サービス「自動車による輸送」について商標「タクシー」が登録されることもありません。

これを裏返すと、たとえ一般に普及した言葉からなるものであったとしても、権利範囲として指定する商品・サービスがその言葉から想起される商品・サービスとは全然違えば、十分商標登録を受けられるチャンスがあるということです。

前述の登録商標は、どれも一般に普及した言葉からなるものではあるものの、指定する商品・サービスとの関係から、法的な評価として「普通名称」とはならず、結局のところ登録を受けられているということになります。

登録されるかどうかは商品・サービスとの関係次第


このように、商標が登録されるかどうかというのは、権利範囲として指定する商品・サービスが何かという点がポイントになってきます。

例えば、前述の商標「ペットボトル」は、飲料用の容器ではなく、「ハーブを主成分とする愛玩動物用スープ」といった商品について使用するものとして登録されています。

「ハーブを主成分とする愛玩動物用スープ」との関係で、「ペットボトル」が一般的名称であると認識されるに至っているかというと、そうではないでしょうね。

商標法には、このほかにも要件が定められており、普通名称でなければ良いというものではありませんが、「普通名称」かどうかとうのは、登録を受けるための最初のハードルと言えます。

使おうとしている商標が対象とする商品やサービスとの関係でどのように認識されるのかという点を意識して、商標の採択をしていっていただけたらと思います。


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