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098:【個人・事業者向け】外国での商標登録出願の時に活用したい、6ヶ月の猶予期間が得られる優先権とは

事業を行っていると、その事業内容によっては海外に進出することが出てきます。

商標権の効力は、属地主義に照らして、権利を取得している国の領域内に限られますので、進出する国での保護を受けるためには、その国で商標登録を受けることが必要になります。

今日は、外国出願を行う場合に活用したい「優先権」という制度について解説したいと思います。

目次


  • 世界の多くは先願主義を採用している
  • 外国出願の時には翻訳などの準備が必要となる
  • 優先権を主張すれば6ヶ月間審査の基準日を据え置くことができる
  • まとめ

世界の多くは先願主義を採用している


以前の記事でもお伝えしていますが、商標登録に向けた出願の審査において、他人の先行商標と類似するかどうかを見る国は多いです。

そして、先行商標があるかどうかの判断基準として、それがいつ出願されたものかということを判断基準とする国が多いです。

つまり、先に出願された商標が優先するという制度で、これを「先願主義」と言います。

これに対する概念として「先使用主義」というものがありますが、客観的な判断が容易は先願主義が世界の多くで採用されています。

外国出願の時には翻訳などの準備が必要となる


このことから、外国で商標登録を受けようとするときにも、できるだけ早い日付で、その国での出願手続を完了することが望ましいと言えます。

しかし、日本が外国語で日本に出願できない実務になっていることと同じように、外国で出願をするためには、その国の実務に沿って願書を作成する必要があります。

例えば、米国であれば米国で認められる言語、中国であれば中国で認められる言語で願書を作成する必要がある、ということです。米国は英語圏、中国は中国語圏ですから、願書はそれぞれの言語で作成することになります。

しかし、前述のように日本の特許庁は、商標登録出願に関して日本語での願書しか受け付けていませんので、これまでに商標登録をしたことがある方であっても、英語や中国語の指定商品・指定役務のリストは持っていないことがほとんどだと言えます。

さらに、単に機械的・文法的に翻訳するだけではなく、できるだけその国それぞれの実務に沿うように指定商品・指定役務のリストを作成することが望ましいと言えますので、外国出願に向けたリストの作成にはそれなりの時間を要することになります。

また、国によっては委任状への公証や領事認証などの認証を求められることもありますので、こちらにも時間がかかる場合があります。

このため、外国出願をしようとしても、思い立ったその日に実行するということは容易ではありません。

優先権を主張すれば6ヶ月間、審査の基準日を据え置くことができる


このように、外国で商標登録出願をしようとすると、相応の時間が必要になってきます。

しかし、時間を要することによって他人の商標が入り込んでしまうことになれば、その人・企業は不利益を被ります。こうした事情は、どこかの国特有の問題ではなく、世界各国共通の問題です。

このため、世界各国でパリ条約という国際条約を締結して、6ヶ月の猶予を認めようというのが「優先権」という制度となります。

このパリ条約に加盟している国・地域間での出願においては6ヶ月間の猶予期間が与えられ、この期間内に外国で出願がされた場合には、最先の出願日を基準として、その国で審査を受けることができるようになります。

ただし、優先権は自動的に認められるものではなく、優先権の利益を受けたい場合には自ら積極的に優先権を主張する必要がありますので注意が必要です。

まとめ


以上、外国出願を行う場合に活用した優先権についてお伝えしてまいりました。

極端な例で言えば、2021年12月13日に行った商標登録出願に基づく優先権を主張して2022年6月13日に外国出願を行っても、半年前の2021年12月13日を基準に審査を受けられるというのは、非常にメリットが大きいと言えます。

外国出願を行う場合に、最近行った日本の出願がある場合には、優先権の活用も視野に入れて、有利に審査を進めていくようにしていきましょう。


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