平成31(行ケ)10037知的財産高等裁判所:審決取消訴訟(4条1項8号:一連一体かつ無間隔に大文字で書した欧文字が同号に該当するか)

日本では、他人の肖像や氏名などを含む商標は、その他人の承諾を得ない限り商標登録を受けることができないこととされています。

この事件では、一連一体かつ無間隔に大文字で書した欧文字につき、4条1項8号にいう「他人の氏名・・・を含む」ものであるかが争点となりました。

本件は、ジュエリーデザイナーであるXの氏名のアルファベット表示「KENKIKUCHI」を要素とする上記商標(商願2017-69467)についての行政事件で、出願人である原告は様々な主張を展開しましたが、以下のように判断され、いずれも退けられました。

本願商標の構成中「KENKIKUCHI」部分は,「キクチ(氏)ケン(名)」を読みとする人の氏名として客観的に把握されるものであるから,本願商標は人の「氏名」を含む商標であると認められる。

仮に,本願商標がブランド「ケンキクチ」のロゴとして一定の周知性を有しているとしても,かかる事実は上記認定を左右するものではない。

自己の「氏名」であれば,それがローマ字表記されたものであるとしても,本人を指し示すものとして受け入れられている以上,その「氏名」を承諾なしに商標登録されることは,同人の人格的利益を害されることになると考えられる。

同号の「他人の氏名」が,著名性・希少性を有するものに限られるとは解し難く,また,「他人の氏名」を含む商標である以上,当該商標がブランドとして一定の周知性を有するといったことは,考慮する必要がないというべきである。

諸外国における他人の氏名を含む商標の登録に関する法制や取扱いが,直ちに我が国における法解釈に影響を及ぼすものではない

特許庁の過去の審決例において,自己の氏名をモチーフしたと考えられる商標が登録査定を受けているとの事実があったとしても,本件審決における本願商標の商標法4条1項8号該当性の判断が,これに左右されるものではない。

この事件は、例え間を開けずに欧文字で書した文字列からなる商標であっても、人の氏名と認識される以上は他人の承諾がなければ商標登録を受けることができないと判断されたものとなります。

判決文はこちらからご覧ください。

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