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088:【個人・事業者・自治体向け】中国でなぜ「青森」や「AOMORI」が商標登録されるのか

もう4年も前のことになりますが、中国で「AOMORI」という商標についての出願がされたことに対して、県などが異議申立てをしたとの報道があったことを覚えている方もいらっしゃるかと思います。

今日は、意外と話題になることも多い「青森」を題材に、中国の商標制度を見てみたいと思います。

目次


  • 地名は原則として商標登録できない
  • 外国の地名は有名かどうかがポイント
  • 今の「青森」「AOMORI」の状況

地名は原則として商標登録できない


地名というのは、誰もが表示として使用したいと考えるものですので、本来的に特定の人に独占させるべきものではありません。

この考え方は、世界各国で共通した認識となっていて、中国では、商標法10条で「県級以上の行政区画の地名又は公衆に知られている外国地名は、商標とすることができない。」と定めています。

「商標とすることができない」のですから、当然登録を受けることができません。

つまり、この条文に該当する商標は、出願をしても審査で拒絶されてしまいます。

外国の地名は有名かどうかがポイント


しかし、地名であれば、あまねく全ての出願を拒絶してもらえるかというと、そうではありません。

世界中には星の数ほどの地名がありますので、それを全てチェックして審査を行うというのは現実的ではありません。

このため、中国の商標法では、「県級以上の行政区画の地名」か、「公衆に知られている外国地名」に限定しています。

つまり、中国国内の地名であっても、「県級以上の行政区画の地名」に該当しなければ、商標登録を受けることは可能ですし、外国地名であっても公衆に知られていなければ、商標登録されてしまいます。

中国の商標審査及び審理基準では、外国の地名に関して、より具体的に「商標が公知の外国地名からなり、又は商標に公知の外国地名が含まれるものは、商標とすることができない。」と明記しています。

日本の首都である「東京」や「TOKYO」は文句なしに公知でしょうから、「東京」や「TOKYO」といった商標を出願をすると、商標法10条を理由に拒絶されることになります。

今の「青森」「AOMORI」の状況


中国のデータベースで「青森」と入力して検索すると、190件がヒットします。

中国で最初に「青森」が出願されたのは、実は2002年のことで、もう20年ほども前のことになり、県としては長年この問題に取り組んできているということになります。

一方の「AOMORI」はもう少し新しく、中国人の出願としては2010年が最古のものになります。

冒頭、2018年に「AOMORI」について県などが「異議申立て」をしたと記載しましたが、中国では審査を通過した後、登録になる前に異議申立てのための期間が設けられていますので、異議申立てをしたということは「AOMORI」は審査を通過したということになります。

どちらも、残念ながら、審査段階では「公衆に知られている」とまでは言えないと判断され、他に拒絶する理由がないから異議申立てのための公告というステージに進んだということです。

「青森」ないし「AOMORI」も、日本人から見れば、どうみても有名な地名なわけですが、中国は漢字圏であるが故に、「青森」は中国語では違った読み・意味合いになり、また、「AOMORI」から「青森」は想起されなかったということでしょう。

県などの取り組みの甲斐もあり、今ではほとんどの「青森」ないし「AOMORI」の商標登録が無効になっていますが、一部、「青森」ないし「AOMORI」からなる商標登録が、今も有効に存続しています。

日本人としては、地名ですからついパッケージなどに使いたくなりますが、商標登録されている以上は警戒する必要があります。出荷をする際には、事前にチェックを行うというのが賢明な対応ということになります。


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